・・・そればっかりが気になって、あたしは結局、今も笑えないまま。
まだ、意地を張っているだけなのかもしれないけれども。










at any price







大事なひとがいなくなる。あたしを置いて離れてく。それに耐え切れるほど大人じゃないし、だからと言って泣きながら駄々をこねられるほど純粋な子供でもない。どちらか選ぶことなんて、天変地異が起こっても自分に出来る筈もなく、ただただ意地っ張りなだけの自分にいい加減嫌気がさしてくる。

意地っ張りな人間は意地を張り続けることでしか自分を表現出来ない。それを嫌というほど知っている。

言い訳をしようと思えばいくらでも出来るし、開き直ってしまうのもひとつの手段だ。そうでもしなければ自分はここまで生きてこられなかった。それ以外に自分を表現出来る術を知らなかった。意地を張り続けることであたしはあたしでいられるのだと。そう思って生きてきたのだ。ずっとずっと。

そうやって必死になりながら確立させてきた自分という存在を、今更否定する勇気なんて生憎持ち合わせてなどいなかった。

「・・・ただの幼馴染よ、安心しなさいって!」

言いながら、の背中をばしばし叩く。

きっと、仕方がない。もともと勝ち目なんてある筈もなく、きっと今の自分に出来ることなんて、いつもみたいに笑って意地を張りながら、スパナを片手に彼らの背中を押してやること、それくらいで。

かなう筈がなかった。知っていた。だって彼女は同性の自分から見ても魅力的な女の子で、笑った顔はまるで花のように見る人々を幸せにさせるし、それはあいつの隣にいるとき一層強い輝きを放っていて、それを見たあいつが頬を染めるのも、全てを含めて知っていたのだから。

だから時々自分の中で見え隠れしていた、中途半端なこの気持ちには蓋をした。厳重に鍵をかけた引き出しの中に仕舞い込んで、もう二度と開けられないようにした。

そう、あたしはいつもみたいに笑って意地を張りながら、彼らの背中を押してやればいい。だいすきな彼らがもしも幸せになってくれたなら、あたしだって意地を張ることもなく、心の底から笑えるようになれる筈。あのふたりが笑ってくれたなら、あたしだってきっと。







・・・ただの幼馴染よ、安心しなさいって!





がこんと音を立てて、床に傷をつけたスパナ。
気になることが、そう、気になることがひとつだけ、あるのだ。





ねえ、あたしはあのとき、ちゃんと笑って言えてたかしら。
いつもみたいにちゃんと、意地を張り通せていたかしら。






・・・そればっかりが気になって、あたしは結局、今も笑えないまま。
まだ、意地を張っているだけなのかもしれないけれども。





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20040225-0314...ウィンリィとエド?(疑問系)これはハッピーエンドになるのかしら・・・!(なりません)