ループープ







例えばの話。声っていつまで覚えていられるものなのだろう。気になって気になって仕方がなくて、何度も何度も頭の中で再生を繰り返す。頭の中で響いたその声に安堵して、その反面、ひどい不安感に苛まれている。いつまで自分はこの声を忘れることなく生きてゆけるのだろう。一体、いつまで憶えていられるだろう。不安になって再生を繰り返す。かたく閉じた瞼の裏側に彼女の姿を思い描く。まるでこわれたテープのよう。頭の中に住んでいる彼女は、いつでも同じ顔をして、同じセリフを呟いた。

電話をすればいい、会いに行けばいい。選択肢なんて山ほどあるけれど、行動を起こす気には到底なれなかった。そういう気分じゃない、まだまだそんな時期じゃない。胸を張って会いにいけるようにならなければいけない。そうじゃなければ彼女に合わせる顔がない。

言い訳なんていくらでも出来ることを知っている。それでも前に進んでいく以外に、仕様のないことも知っているのだ。だからこそ。

まるでこわれたテープみたいに。何度も何度も再生を繰り返す。映し出されるシーンはいつでも優しくオレを包み込み、そして小さな傷跡をいくつも残してゆく。同じ顔をしている彼女は飽きもせず、何の躊躇いすらもたずに、同じセリフばかりをオレに向かって呟くけれど。

例えばの話だ。百歩譲ってオレが彼女に電話をしたとして、会いにいったとして。もしもその時オレに伝えられた情報が、頭の中のそれと食い違っていたなら。オレは。

オレは、どうすればいいのだろう。

がらがらと音を立てて、色々なものが崩れてしまうような気がした。だから電話は出来ないと思った。会いには行けないと思った。タイミングを逃してしまったのだ、オレは。

だから再生を繰り返す。こわれたテープを何度も、何度も再生する。頭の中で響いた声に安堵して、かたく閉じた瞼の裏で微笑む彼女に口を開いて。オレは元気だから、と。





そうすれば彼女はいつだって、同じ顔をして微笑んで、同じセリフをくれるから。色褪せることもなく、思い出の彼女はそこに存在しているけれど。知っているのだ。本当は。





恐れている訳じゃなくて。
ただ、ほんの少し。自分が弱いだけだと。





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20040426...エドなんです(・・・)。微妙もいいとこで・・・!す、すみませ・・・!