トラフィックジャム







トラフィックジャム、トラフィックジャム。発音だってわかるのに、言葉の意味だけわからない。斜め前の席に座って余裕かましてシャーペンくるくる回してる、例の彼女と大違い。当然と言うなら当然だ。だって彼女は外部進学ねらってる。勉強だって1日何時間してるのか予想もつかない。だから当然なんだけど。なんか釈然としない、納得いかない。これじゃ全く立場が逆だ。

どうしようもなく苛々して、シャーペンで机をカツカツ叩く。その音が気になったのか、僕を睨んできたりする身の程知らずは数知れず。そんな彼等ににっこり微笑って制裁を。

模試なんて必要ないんだけどね、ホントは。だけどが受けるって言うから。だからわざわざ来てあげた。なんかやたらと人が多くて、ピリピリした雰囲気で。教室入った瞬間に感じた、なんだか妙に落ち着かないざわついた空気とか。ホントは苦手なんだけどこーいうところ。全部全部なにもかものため。

「不二ってほんと、のためならなんでもやんだね」

呆れて溜め息吐きながら僕の顔見て呟いたのは、チュッパチャップス口にくわえた英二だった。それはたぶん2日前のこと。ほんとバカップル。呟いた言葉は聞き逃さなかったけど、聞こえなかった振りをした。だって英二はきっとまだ知らないから。

トラフィックジャム、トラフィックジャム。頭の中をやたらと支配するその言葉。見直しだって完璧で、それさえ思い出せれば100点満点間違いなしなのに。それだけが。どうしても。

どうしても。

真っ暗闇に堕ちて行く。ひとりぼっちで堕ちて行く。ぐるぐるぐるぐる僕の周りを渦巻いて、終いにはのみこんでしまうんだ何もかも。罪悪感とか良心とかそういう感情も全て。何もかも全部。

トラフィックジャム。本当は、知ってるくせに。

思い出せないんじゃなくて思い出そうとしてないだけだってことも。持ち掛けたのは自分のくせにこんなに後悔して人の所為にして。未だに晴れないこのもやもやした感情の正体とか、どうして英二があんな風に笑ったのかとか。

協力してくれるよね、なんて。なんて都合のいい台詞を吐いたのだろう僕は。知っていたくせに何も知らない振りをして、有無を言わさず微笑んで。

本当は、知ってる。





タイムリミットまであと5分。それまでにもしも覚悟を決めたなら、自分の口で自分の思いを伝えよう。彼にも彼女にも、自分にも。





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20040322...不二くん、のつもりだったんですが・・・(なんなのこれ)(でも楽しかった)。