てもめても







暖かい日が続いたかと思えば、天から白い花々が舞い落ちてきたりもする。白い花々、なんて言ったら聞こえがいいけれど、つまるところ只の自然現象、季節の変わり目が気まぐれに運んできた厄介者。こんな日は線路が凍結して列車も動かない。次の町に移動もできない。急に暇になった時間を持て余し気味に、それでも図書館に行こうという気力さえこんな天気じゃ起こるはずもなく、窓を開けっ放しにして、目の前に広がる景色を只ぼんやりと眺めていたりもする。

晴れていればよかった。列車が動いていればよかった。次の町に移動できていれば、こんな天気じゃなければ。

だったら、こんな思いをしなくて済んだのに。

風邪ひくよ、アルの台詞を聞き流し、目の前に広がる景色と記憶の中の景色を無意識の内に比べていたりもする。ノスタルジー、それともホームシック? どうして今更。冗談じゃない。

似ても似つかない、あの家から見ていた風景はこんなものじゃない。こんなに建物がひしめきあってはいなかったし、空だってもっと広くて近かった。手を伸ばせばいつだって届きそうなほどに。

ああ、それに。
そうだ、いつだってあの風景の中には彼女がいたんだ。

寂寥感。一言で表現してしまえばもうそれまで。だけどそんな一言で表現しきれない何か。いくらなんでも簡単にまとめすぎかもしれない。目の前に広がる景色の中に彼女がいる筈もなく、さっき電話で話したばかりなのに、さみしくてあいたくて仕方がない。

電話なんかで話すよりも会って話がしたい。笑った顔を見たいし、怒った顔だって見たい。本当はいつだって傍にいたいのに。

そう、それを実感するのはいつだって、ほんの些細なことばかり。

泣き虫な彼女が泣いていないか心配で、無理ばかりする彼女が元気でやっているか気になって。だけど彼女の声色からは結局何も読み取れない。オレは、いつだって。

それに気付けない。彼女の嘘はいつだって巧妙だから。心配をかけることを何より嫌うから。やんわりと、優しくオレを遠ざけて。そんな彼女だから、ずっとずっと、傍にいてやるべきだったのに。こんなにも遠く離れてしまった。天気予報も違うくらいに。

しんとした部屋、音のない世界。白い花が音を吸い取ってゆく。
曇り空は更に暗くなって、心細さが増すばかり。

「・・・なっさけねーの」
「兄さん?」

気が付けばいつだって彼女のことを考えている。記憶の中で、胸の中で、にっこり微笑む彼女にいつだって語りかけている。





――こんなにも、焦がれている。





彼女のことを考えるだけで、途端に弱くなる自分を知っている。
傍にいないと駄目になってしまうのは、本当は自分の方なのに。





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20040320-21...古愁ちゃんとの夢交換で差し上げるもの。こんなのでよいのかしら、かしら・・・!