やるべきことだってやらなくちゃいけないことだってやりたいことだってたくさんある。それこそ山ほどある。あと何ヶ月か経ったら俺だって一般世間でいうところの受験生になってしまうし、外部を受けるかどうかはわからないけれどそれによっては部活だって引退しなくちゃいけない。だったら1秒だって無駄にするべきじゃない、いつまでもウジウジ悩んでる場合じゃない、いつまで経っても出ない答えばかり探してるべきじゃない。ラッケトを持って、俺は前に進むべき。 けれども俺はただ恋をしただけで。すきな人が幸せならそれでいいかな、そう思えるようにもなってきたところだし、地位低いから面倒事は避けたいし。先輩と女取り合うなんて最悪じゃないですか、下手したら部内に俺の居場所なくなっちゃうかもしんないし。ましてやあの2人はもうずっと前から両思いで、誰かが入り込めるような隙間は微塵もなくて、俺1人が我慢すれば全部丸く収まる訳なんだから。 だったらもう全部それでいーじゃないですか。みんなが幸せになれるなら、俺はみんなの分の不幸せ、全部消化してやるつもりですよ? 別に悲劇のヒーロー演じてる訳でもなく。キレイ事並べてる訳でもなく。ちょっとだけ偽善はあるけれども。 でもだけどそうでもしないとやってらんないんだよなあ。 まだ気持ちの整理はついてません。 まるで透き通るように真っ白い肌も鈴のような声も細い手足もさらさらストレートの髪の毛も可愛らしい笑顔もその時右の頬にだけできるえくぼも何もかも全部俺のものじゃない。 それだけじゃないそれだけじゃ。俺1人、なんだか勝手に疎外感。先輩、だって水臭いじゃないですか。聞いてませんよどうして教えてくれなかったんですか。もしかしてそれを言ったら俺が傷付くとでも思ってたんですか? それとも俺が横取りするとでも思ってたんですか? 朝の通勤ラッシュ時の電車にも慣れたしローファーにも慣れた。早起きだって全然苦にならなくなったし背だって伸びたんだ。もう子供じゃないっすよ俺だって。 いい子にしてたでしょう、俺は、ずっとずっと。 だから、 だからさ。 少しくらい俺のこと、信用してくれたって。 「・・・悪ぃ、別に、隠してた訳じゃねぇんだよ」 「・・・・・・知ってます」 宍戸先輩は、そんな器用な性格してないから。でもだけど、割り切れないものがあるでしょう誰にだって。俺はもしかしたら、もしかしたら内緒にされてたのが嫌だっただけで、ああだけどやっぱりそれだけじゃないんだろうな俺はただ、 ただ俺は、 そうそう、俺にはやるべきことだってやらなくちゃいけないことだってやりたいことだってたくさんある。それこそ山ほどある。あと何ヶ月か経ったら俺だって一般世間でいうところの受験生になってしまうし、外部を受けるかどうかはわからないけれどそれによっては部活だって引退しなくちゃいけない。だったら1秒だって無駄にするべきじゃない、いつまでもウジウジ悩んでる場合じゃない、いつまで経っても出ない答えばかり探してるべきじゃない。ラッケトを持って、俺は前に進むべき。後ろなんか振り向かないでひたすら前を見詰めて前に、 前に進むべき。 「・・・・・・悪ぃ」 宍戸先輩は俺に頭を下げてもう1度謝った。それは一体何に対しての謝罪なのかわからなかったけれども。 家に帰ろう、そう思ってもいつもの道は工事中。 俺は先には進めない。 BACK 2003(?)...内緒にされてたことがかなしい。こんな話ばっかだなあ(・・・)。 |