嫌われてるのかなあ、やっぱり。溜め息を吐いて目の前の彼女はそう呟いた。誰に、とは言わない。言わなくてもわかるし、知っている。彼女はじっと俯いたままアップルティーに視線を落として、そこに映った自分の顔と睨めっこしながらまた呟いた。不細工な顔。心底嫌そうに。眉間に皺を寄せて。 こんな時の彼女には何を言っても無駄だと知っている。何もかもを遠ざけて、自分の殻に閉じこもる。只管に考えて考えて考え抜いて、答えが出てくるまで動こうとはしないのだ、決して。きっと、あたしが彼女にしてやれることなんて何もないのだと思う。こうして、黙って話を聞いてやることくらいしか。 いつも睨まれているらしい。たまに話しかけられたと思えば口調はなぜか怒っているらしい。だけどその原因がわからなくて、でもそれはきっと自分に非があるのだと、彼女はそう思い込んでいる。 彼女の顔を盗み見た。眉間の皺はさらに深くなり、紅茶は少しも減っていない。彼女のお気に入りのクッキーだって出したのに、それすらも手付かずで。 どうしてわたしはこんなに可愛くないんだろう。蚊の鳴くような声でそう呟く。そこまでネガティブに考えることもないのにはちゃんと可愛いのに。 神様は意地悪だ。 だってあたしは知っている。彼も同じようなことで悩んでいると知っている。目が合ってもすぐ逸らされる、話しかければ泣きそうな顔をする。自分は彼女に嫌われているのではないだろうか、と。そうやって彼も悩んでいると知っている。知っている、のに。 あたしは無力で、無力だからなんにも出来ない。こうやってアップルティーとお気に入りのクッキーを棚から出して、黙って話を聞いてやることしかできない。本当はアドバイスだってできるはずなのに、あたしは嫌な奴だから、そんなことすらできなくて。 「・・・ごめんね」 「・・・ウィンリィ?」 「いっつもなんにもできなくて、ごめんね」 本当はできないんじゃない。やらないんだ。やろうとしないだけなんだ。言いたいことは山ほどあるの、エドもが好きなのよ。知ってる。ちゃんとわかってる。だから悩むことなんて何もない。たった一言。自分の気持ちを伝えたら、2人は幸せになれるのに。あたしがそれを言ったなら、2人はもう悩まなくて済むのに。 だけどあたしはひとりになるのが嫌で厭でいやで仕方がなくて、いつだってその一言を言えないまま。 世の中って残酷だ。 ぎゅっと握った掌は汗を掻いていて気持ちが悪い。目の前がぐるぐる廻って自分がどこにいるのかもわからなくなる。頭の中に響くのは彼女が昔口にした哀しく優しい言葉だけ。 ウ ィ ン リ ィ 、 わ た し た ち ず っ と 、 と も だ ち で い よ う ね ? ほら、音を立てずに何かが崩れていく。 お別れの日は確実に近づいている。 それでも地球は廻っているのだ、あたしたちなんかお構いなしに。 BACK 20040215-16...ウィンリィと、ほのかにエド。いつまでも一緒にいたいのに。ああ暗い・・・(凹)。 |